今回の相棒は、特命係の人情派の刑事(刑事ではない)の陣川警部補が大きく影響するストーリー。
ネタ晴らしはしたくないので、最初はふわっと良い点と、このブログのタイトルの理由を書く。
良い点は、陣川警部補らしい、コミカルかつ人情に厚い話であったこと。
悪い点は、もうミステリードラマとしての体裁を保っていないこと。
ここからは、ネタ晴らしもありうるので注意。
右京さんは陣川警部補との付き合いが一番長いからか、それとも最初から見抜いていたのか、一番の特質が惚れた相手を都合よく見てしまうところと小気味よくいっている。
この点については、さすがの付き合いの長さだなと微笑んでしまう。
別の好きなドラマ自惚れ刑事を少しおもいだすが、あれはまた別の舵の切り方を思いっきりしているのでここでは割愛する。
陣川警部補が好感を抱いた女性がトラブルに巻き込まれていることを偶然しり、彼女を守ろうと動き回る姿は、人情のドラマとしては良いと思った。
それが一番輝いてみえたのは、電話で彼女を心配したときだ。姿こそみえないが、それで彼女は魔が差す瞬間を一瞬でもやりすごせたのだ。
しかし、そこで、別の物が悲しくも犯行に及んでしまう。
亀山君が、その彼女らの苦しみ・動機を「常にスズメバチの巣の近くにいるようなもの」と例えたのは、暴力で苦しむ人にとって多くの共感を生み、おそらくそういったことに鈍感な人にも届く雄弁なメッセージだと思う。
今回の相棒の価値は、暴力に苦しむ人たちの心情を少しでもわかりやすく表現し、かつ、暴力で苦しんでいる人たちを傷つけるようなところが少なくとも私にはわからなかったことだろう。
しかし、ミステリードラマとしてみると、重大な反則行為をしていて腹が立った。
たしかに、前半は、細かな謎解きはしてみせた。しかし、それは私でもすぐにわかる、別のニュースでもみたような話をパッチワークしたようなものだった。
そして重要な犯人へのアプローチ。
これが驚くことに、編集で全てカットしたかのようになくなっている。
もちろん、登場人物としては出ているし、それなりにしゃべってもいる。
しかし、接点は綺麗に隠している。
わずかに右京さんが引っ掛かりを覚えたシーンはあるが、確証につながるものは全くヒントとして出てこない。
読者への挑戦状は絶対に出せない残念な仕上がりだ。
ヒントがない状態で犯人を明かし、その謎ときには、新しい情報だけが出てくる。
更にたちが悪いのは、演出で、さも推理で解き明かしたかのように、鮮やかに犯人のシーンに切り替わる点だ。
もちろん、その前に集めた手掛かりなどは一切なく話は進むが、それっぽくみせているのが余計に空虚だ。力を入れるところが違う。
こんなのはミステリードラマどころか、足でかせいで順番に手がかりを出していく刑事ドラマですらない。
人情噺としては良いけれど、なんのための右京なのか。彼は名探偵ではなくエスパーにでもなったのだろうか?
このドラマは、ミステリー枠で扱うべきではない。
最初は狂暴な蜂の巣の近くにある死体ということで、「死体として認識してほしいけどあまりじっくりはみてほしくない」という感じで、死体の入れ替えトリックなどを期待した。
しかし、人情噺の例えにつかわれるだけ。これをかいたひと、あるいは編集した人は、ミステリーとしてこの作品を出す気はなかったのだろう。
これは相棒で出すべき話ではない。
推理が稚拙とかいうレベルでもなく、推理を放棄している。
最初の頃の輝きがなくなって、去年一瞬その輝きを取り戻したと思ったが、やはりミステリーを作る作家を変えるべきだ。
これはミステリーではない。もうミステリーの看板は下げて、人情ドラマにすればよい。
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