前置きが長いので、このタイトルの感想だけならば次の見出しまですっとばしてみてほしい。しかし、私はアガサ・クリスティーや、「ジェシカおばさんの事件簿」「刑事コロンボ」の原作者の作品が(私の見てきた中では総合的に)とても好きであることは明言しておこう。
『アガサ・クリスティー ミス・マープル』シーズン2~6、BS11にて無料で一挙放送! - 海外ドラマNAVI |
ミス・マープルは以前はNHKでよくやっていたが、今はBS11で繰り返し放送しているので興味があればみてほしい。
私は、アガサ・クリスティーの作品が苦手かつ大好きだ。
苦手な理由は、1930年代前後のイギリスの慣習などが前提になっていたり、ドラマのキャラの名前と顔を覚えるのが苦手だからだ。それに人によって同じ対象を別の名前で呼ぶこともある。
苦手要素は別にアガサに限らず、外国作品で衣装などがころころかわったり、人によって愛称が変わったりするもの全般にいえることだ。
やはり、アガサ・クリスティーはやはりミステリーの女王だと思う。
それは単に私があまり本を読んでいないからという可能性は大いにある。
しかし、ポワロを見て、ミス・マープルを見て、最初は「こいつは誰だっけ?セリフに出てくる名前は誰だ?」と困惑しながらも、なんとか状況を把握して、謎解きではだいたいいつも驚くべき相手が犯人で、その実行可能性、動機、不可解な理由などがすとんと最後に落ちるようにできているからだ。
「蒼ざめた馬」は独特かつ定番の安定感
ミス・マープルの私のイメージは、田舎町に住む老婦人ミス・マープルが、知り合い親せき友人などの縁のある場所で事件に遭遇して、それを持ち前の好奇心で、田舎町の人間模様に例えながら鮮やかに解き明かすイメージだ。
しかし、今回は、そんなほのぼのとした雰囲気がすぐに消し飛ぶような、いきなりホラーの世界に迷い込んだかのようにストーリーが展開する。
事件を解くためにホテルを訪れるということは、ミスマープルの好奇心からして通常だが、今回はその行った先が異常だった。
明らかに怪しい従業員たちの運営するこじんまりとしたホテル。
そして、街では観光客がメインになったとはいえ、昔から続く恐ろしい歴史を再現するかのような祭りが開かれる。
明らかに怪しい従業員たちの運営するこじんまりとしたホテル。
そして、街では観光客がメインになったとはいえ、昔から続く恐ろしい歴史を再現するかのような祭りが開かれる。
ここからはうっすらネタバレがある。
私は最初、これはいつもと雰囲気が違うと思った。
そして、途中から、これはいつものような個人的な動機ではなく、利益のための裏社会のようなものの組織的犯罪ではないかと思い、正直少し興味が薄れた。
そして、途中から、これはいつものような個人的な動機ではなく、利益のための裏社会のようなものの組織的犯罪ではないかと思い、正直少し興味が薄れた。
しかし、最後、その組織的な様相とは別に、膨大な連続事件を動かしているものは一人のものだったことがわかる。
犯人は本格ミステリーではお約束の、前半の方から出ていたものだ。
しかし、私はあっとさせられた。意外だったからだ。
実行可能性については、あいまいだなと思ったが、とても最初から独特な不気味な雰囲気ではじまり、最後にカーテンをあけて白日のもとにその不気味なものの正体が浮き彫りにされ、それを理由をもって解き明かされた。
失点は、死因がぼやかされたことと、その時代背景を知らないとわからないかもしれない『凶器』についてヒントがなかったところだ。
#個人的にさらに欲を言えば、人間関係や顔を覚えるのが難しいので人物相関図をウェブサイトにだすなり、みんなに名札をつけてほしい。
#個人的にさらに欲を言えば、人間関係や顔を覚えるのが難しいので人物相関図をウェブサイトにだすなり、みんなに名札をつけてほしい。
いつもどおり、面食らったような終わり方でもあるが、冷静さをかいているのかロジックがかなりしっかりしているのか、読後感は混沌や謎がひとつの推理ですっと腑に落ちたかんじで、禍々しい雰囲気の前編もあり、最後は清々しい気分すら感じている。
組織的犯罪の雰囲気を感じたことについてもきちんと納得できる形で説明しており、しかし、実は、ひとりのものが暗躍してその組織を組織たらしめていたところに新しい喜びを見いだせた。
フーダニットならぬフーザボスといった感じの新しい魅力だ。
日本でもこういった作品がまた出てくることを望む。
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