予告を見たときからこれは純粋推理のミステリーだと期待していた。
その期待は当たった。
念のために検索したら、純粋推理という言葉が正しいのかわからなくなった。
僕がこれぞ傑作と感じた純粋推理は「麦酒の家の冒険」だ。
大学生たちが緊急避難?で立ち入った館にはベッドと冷蔵庫。冷蔵庫の中にはビールだけがびっしり冷えている。そこから推理に推理を重ねて、真相を探るものだったはず。
小学生のころに図書館で借りて読んだ、海外ミステリー(もちろん日本語訳)の刑事の息子が家で事件の話を聞いて解決するのも似ていると思う。
要するに安楽椅子探偵かつヒントが少なく、後出しのヒント(結論を最終推理の後に裏付ける報告は除く)がないものが僕の中での純粋推理なのかもしれない。
とにかく、素晴らしいと思った。場面が変わらないのに飽きないのは、その推理の展開とキャラクターによるものだと思う。
今回、それをドラマで見られると思いわくわくしていた。
あいにく、すぐには見られなかったが、今日こうして見て、少し物足りなさを感じつつも楽しい23分を過ごせた。
「10円玉があと5枚は必要だ」
すれ違ったサラリーマン風の男の携帯で話すその言葉から、推理に推理を重ねた、探偵事務所で繰り広げられる純粋推理だった。
すばらしい。キャラクターもみな魅力的でそれぞれの持ち味を出していて良い。
これは麦酒の家の冒険のキャラクターにも言えることだ。
純粋推理は、場面が変わらない分、キャラクターで飽きさせないことも大事だと思う。
ドラマなので推理の部分も映像化していて、いつものメンバーが変装してそれを再現しているのもくすっとした。
最後の推理も、見ている間に違和感は感じず、なるほどと思わされるものだった。
残念なのは、ドラマの時間の短さかもしれない。
麦酒の家の冒険では、推理にさまざまな枝葉があり、それがたまに交差する楽しさがあった。
しかし、短時間だからか、正解と異なる枝はすぐに切られ、わりと紆余曲折なく真相にたどりついてしまう。
せっかく他の場所にもう一人推理するものがいたのにリンクが薄かったのも残念だ。
(ある意味、そのリンクを期待してミスリードされたのは面白かった)
本当に、このドラマは次回1時間枠で作ってほしいと思う。
作家さんがきついなら、他の作家も動員して同じテイストでボリュームを増やして、ストーリーを構築してほしい。
これは相棒とは全く違う雰囲気ではあるが、ミステリーファンとしては、2000年代の初期相棒のワクワク感を感じさせる。
足で稼ぐだけの刑事ドラマに興味はない。ミステリードラマをもっと作ってほしい。
要するに読者への挑戦状をおけるような、後出しじゃんけんではないミステリーだ。
刑事ドラマならばはぐれ刑事純情派で人情味を感じ満足できる。
今は土曜ワイドもカサスもなくなった。年末に気合をいれた2時間ミステリーが昔はあったが今はない。
NHK でたまにやるかと思えば、骨とう品のようなホコリをかぶった昭和の傑作といわれたミステリーもどきの何十回目かのリメイク。
安パイと思っているかもしれないが、大外れだ。もうそんなミステリーもどきに興味はない。もっと優れたミステリーはたくさんあるし、骨とう品は当時の俳優たちのほうがしっくりくるものを作っている。
そのファンには悪いが、あれは海外ミステリーを読んで、それをまねようとして、ごちゃごちゃにこねくりまわしただけのものだ。
日本独特の雰囲気のまじった雰囲気はミステリーにあっているが、ミステリーではなく冒険小説に近いと思う。
しかし、私もDVDでみさせてもらっている時点で、きらいではないのかもしれない。しかし、そればかりリメイクする今の風潮にはうんざりしている。特にNHKは最近執心すぎる。そして奇をてらった違うキャラの探偵で最後にイヤな気分にさせられたりする。
そんな骨とう品のリメイクばかりしていないで、もっと最近の話題のミステリーをドラマ化すべきだ。
骨とう品もよいが、新しいミステリーをみたいのだ。
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